アマテラスは、不思議に思いました。
「どうしてこんなに外が騒がしいのかしら…」
閉じた天岩戸をそっと開いて、
「私が天岩戸に隠れたせいで、高天原が闇に包まれ、地上も真っ暗になったはずなのに、どうしてアメノウズメがエンジョイダンシングで、神々はみんなキャッキャ喜んでいるのよ?」
と尋ねてみます。
するとアメノウズメは、こう答えたのです。
「あなたよりもっとスゴイ神様がいらっしゃるので、皆で歓喜の声を上げてダンスしているのですよー」
さらにアメノコヤネとフトダマが例の鏡を差し出して、アマテラスに見せたところ、確かに鏡に神らしい姿が映っています。
「ますますアヤシイ…」
アマテラスはその神のことが気になって仕方ありません。もう少し良く見てみようと、天岩戸をもう少し開いて身体を乗り出したそのとき!
天岩戸の陰に隠れていた力持ちのアメノタヂカラオが、アマテラスの腕をぐいっと掴んで引っ張り出しました。
間髪入れずにフトダマは、注連縄(しめなわ)を天岩戸の入口に張って通せんぼ。
「もう中には戻れませんよ」
無理矢理でしたが、作戦は大成功。そんなこんなでアマテラスが天岩戸から出て来たので、高天原も地上も自然と明るくなりました。
こんなことが起きてしまったので数多の神たちは協議をし、罪滅ぼしだとして騒動の原因のスサノオに対して、彼の持ち物を没収しました。
そして彼のヒゲと手足の爪を切ってお祓いをし、高天原から追い出したのでした。
さて、その後のことです。
高天原を追い出されたスサノオは、お腹が空いてしまいました。オオゲツヒメ(大気都比売命)に食べものをねだるスサノオ。
するとオオゲツヒメは快諾し、鼻や口や、はたまた尻からもグルメな食材を取り出し、料理して差し出すのでした。
しかしその一部始終をこっそり見ていたスサノオは激怒。
「汚い物を食わすなっ!!」
オオゲツヒメをぶっ殺してしまいました…
亡くなった彼女の頭の部分からは蚕が生まれ、目からは稲の種が、耳からは粟が、鼻からは小豆が、局部からは麦が、尻からは大豆が生まれました。
これらをカミムスビの神が取らせて、五穀の種としました。
こんないきさつがあったのち、スサノオは、出雲(島根県)を流れる斐伊川(ひいかわ)の上流にある鳥髪(とりかみ)というところに降り立ちました。川上から箸が流れて来たのを見つけたスサノオは、川上に人がいるのだと考えて、川を遡って行きました。
すると老父と老母が、娘を囲んで泣いているではありませんか。スサノオは、泣いている老夫婦が誰なのか尋ねました。
老父は答えます。
「私は山の神のオオヤマツミの息子です。名前はアシナヅチ(足名椎命)と申します。妻の名前はテナヅチ(手名椎命)で、娘はクシナダヒメ(櫛名田比売)です」
スサノオは続けて質問します。
「どうして泣いているのだい?」
「私にはもともと八人の娘がいました。けれども高志(こし・場所は不詳。越の国つまり現在の北陸地方だとする説あり)のヤマタノオロチが毎年やって来て、娘たちを食べてしまったのです。そして今がちょうどまたやって来る時季なので、泣いていたのです」
画像引用:公益社団法人 島根県観光連盟(http://www.kankou-shimane.com/ja/gallery)