イザナミは続いて雷の神たちに千五百もの黄泉の国の軍勢を従わせて、イザナギを追わせました。イザナギは剣を後ろ手に振り回しながら逃げました。
現世と黄泉の国の境目にある黄泉比良坂(よもつひらさか)という坂のふもとまで辿りついたとき、イザナギはそこに生えていた桃の木から桃の実を3つもいで追っ手に投げつけます。すると追っ手は、皆逃げて行きました。
「お前が私を助けてくれたように、人々が苦しみ患うときには皆を助けてやってほしい」
とイザナギは桃の木に伝え、木をオオカムヅミ(意富加牟豆美)と命名しました。
ところが今度はとうとうイザナミ自身が追い駆けてきました。イザナギは千人もの多人数で引くほどの重さの岩を坂に置いて、道を塞ぎます。
岩を挟んで向かい合ったイザナミに対して、イザナギは離縁を言い渡しました。イザナミは、
「愛しいあなたがこんな仕打ちをするのなら、私はあなたの国の人々を一日に千人絞め殺してしまいましょう」
と言い、
イザナギは、
「ならば私は一日に千五百人ぶんの産屋を建てましょう」
と返しました。
これゆえにこの世では一日に必ず千人が死に、一日に必ず千五百人が産まれるようになったのです。
黄泉比良坂は、今の出雲国(島根県)の伊賦夜坂(いふやさか)のことです。
こんなことがあったので、イザナギは、
「なんと穢れた醜い国に行っていたことか。身を清めないといけない」
と言って日向(宮崎県)の阿波岐原(あわぎはら・宮崎市)へ向かい、禊をしました。イザナギは禊のために身に着けていた杖・帯・袋・衣・袴・冠・腕輪を放り投げ、放り投げたものからもそれぞれ神が誕生しました。
「上の瀬は水の流れが速い。下の瀬は遅い」。
こう言ってちょうど良い速さの中の瀬に入り、身を清めました。清めている間にもさまざまな神が生まれました。
画像引用:公益社団法人 島根県観光連盟(http://www.kankou-shimane.com/ja/gallery)、公益社団法人 宮崎市観光協会(http://www.miyazaki-city.tourism.or.jp/tourism/spot/85.html)