話は変わって、スサノオの子である大年神(おおとしのかみ)は、イノヒメ(伊怒比売)と結婚して、五柱の神が誕生しました。
またカヨヒメ(香用比売)との間には、二柱の神が生まれました。
またアメノチカルミズヒメ(天知迦流美豆比売)との間にも、十柱の神が生まれました。
十柱の神のうち、羽山戸神(はやまとのかみ)は、オオゲツヒメ(スサノオに殺された女神なのですが、なぜか復活しています)と結婚して、八柱の神が誕生しました。
さてさて、突然アマテラスが、
「豊かに葦(あし)が生い茂っていて、五百年も千年も秋の稲穂の実りある国は、大国主ではなく、私の子のアメノオシホミミ(正勝吾勝勝速日天忍穂耳命)が治めるべきじゃないの?」
と思いついたらしく、彼女はアメノオシホミミを高天原から地上へ遣わしになりました。
アメノオシホミミが天浮橋(あめのうきはし)に立ち、地上の様子を覗いてみたところ、地上はやたら騒がしいところのように見えました。すぐに彼は高天原に戻り、アマテラスに不平を訴えました。
「あんな騒がしい国はイヤだ」
アマテラスとタカミムスビは、天安河原(あまのやすかわら・写真参照)に神々を集め、知恵の神であるオモイカネ(思金神)にも、
「地上の国は私の子が治めるべき国よ! でもそこには乱暴な神がうじゃうじゃいると思ってるみたいなの。どの神を高天原から派遣して、あいつらを大人しくさせたらいいと思う?」
と尋ねてアイデアを出させました。
オモイカネと神々は相談し、
「アメノホヒ(天之菩卑能命・アメノオシホミミの弟神)を派遣しましょう」
と言いました。
そういう流れでアメノホヒを地上に送りこんだのですが、即座に大国主に媚びてしまうありさま。三年が経過してもなお、高天原に戻って来なかったのです。
従ってアマテラスとタカミムスビは、また神々を集めて尋ねました。
「地上に遣わしたアメノホヒが、全然帰って来ない! 今度はどの神を派遣したら良いかしら?」
オモイカネが、
「アマツクニタマ(天津国玉神)の息子であるアメノワカヒコ(天若日子)を派遣しましょう」
と答えました。
そういうわけで天鹿児弓(あめのかごゆみ)という弓と天羽々矢(あめのはばや)という矢を持たせて、アメノワカヒコを遣わしました。
ところが彼は地上に降りるや早々に大国主の娘のシタテルヒメ(下照比売命)と結婚し、おまけにアメノオシホミミに成り替わってその国を我がものにしてしまおうと思い、なんと八年経っても高天原に戻って来なかったのです。