やって来たスサノオに向かって、アマテラスが言い放ちます。
「お前はなぜここへ上がって来たのか!」
スサノオは答えました。
「よこしまな心で来たんじゃありません。父さんのイザナギから泣いている理由を問われたので、『母の国に行きたい』と答えたら、『この国にいることはならぬ!』と追放されてしまったのです。
ここには挨拶に来ただけで、悪だくみをしようだなんて全然思ってないのに」
アマテラスは、
「お前の心がよこしまではないということを、一体どう証明するつもり?」
と尋ね、
スサノオは、
「誓約(うけい)をして、神の子を生んで証明しますよ」
と返しました。
(※誓約とは、古代の占いのこと。予め結果を宣言してそのとおりになるかならないかで、正邪を判断する)
こうしてお互いに天の安河(あめのやすかわ)と呼ばれる川を挟んで誓約をし、まずはアマテラスがスサノオの持っている長い剣を受け取りました。アマテラスは剣を三つに折って、神聖な井戸の水で清め、バリバリ噛み砕きます。
そして息をふーっと吹き出すと、三柱の女神が生まれました。
続いてスサノオは、アマテラスの左のみずらに巻いてあった勾玉(まがたま)をたくさん通した紐をもらい受け、神聖な井戸の水で清め、やはりバリバリ噛み砕きました。
そして息をふーっと吹き出すと、今度は五柱の男神が生まれました。
これを受けてアマテラスは言いました。
「お前が生んだ五柱の男神は、私の持ち物から生まれた神だから、当然私の子だわ。先に生まれた三柱の女神は、お前の剣から生まれた神だから、お前の子だよね」
するとスサノオは、
「私の心が清く、よこしまではないからこそ、私の子は女神だったのですよ。だから私の勝ち!」
と勝利宣言。
勝った勢いで調子に乗ったスサノオは、あろうことかアマテラスの田んぼの畦を壊し、溝を埋め、御殿に糞をまき散らしたのです。
けれどもアマテラスはそれを咎めず、
「糞は、弟が酔って吐き出した吐瀉物じゃないかしら…
田んぼの畦を壊したり、溝を埋めたりしたのも、田んぼを作り直そうとしたのだと思う…」
とスサノオをかばったのでした。
ところがそんな姉の思いやりはどこへやら。スサノオのいたずらは酷くなる一方だったのです。